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2007/04/25

演劇の値段。(後編)

で、昨日の続きぃ。

現場の人間の話はしこたましたので、もう一方のチケ代を決定する製作者サイドの話になんとなく移りますか。

彼らにしても、あくまで諸々の経費でかさんでしまう巨額の予算をもとに金額を設定しているわけで、決してあこぎな商売をやっているわけではない。
プロデュース公演隆盛の時代にあって、主要キャストのギャランティだけで通常の劇団公演とは比較にならないほどアホみたいな予算が取られるだろうし、長期に渡る公演の場合、劇場費ひとつとってみてもかなり莫大な費用がかかっているハズである。

では、チケ代を少しでも押さえようとするなら、どういう手段があるのか?
試しに『役者のギャランティを抑える』、
『セットや照明・音響などに出来るだけ金をかけない』、
もっと頑張って、
チラシを地味にしてみる』、
『稽古場を貸しスタジオじゃなく公民館でやる』、
役者がスタッフを兼ねる
などの案を挙げてみるとしよう。
しかし、これらは舞台のクオリティを著しく下げる原因になるため、いかんせん無理がある。
昨日も書いた通り、なにせ『作品が面白い』ことが幸福の大前提なわけだから、そこに支障をきたしては本末転倒もいいところだ。
一流の俳優を使うには当然それに見合ったギャランティが生じるし、視覚効果がチャチになればそれだけで作品の質がガクっと落ちてしまう。
小劇場では役者が舞台の仕込みやバラシ、衣装・小道具作り、本番中の転換まで手伝うことも普通にあるが、商業ベースの舞台ではまずそれはありえない。
藤原竜也や宮沢りえが梅が丘や祖師ケ谷大蔵の区民集会所にいたら、なんだかプチパニックになるだろうし。

いっそヤケクソ気分で、
『主演俳優を本番はそっくりさんがやる
血のりだと思ったらマジでその役者の血だった』
『けど、治療費もその役者持ち
的なウルトラCも考えてみたが、考えてる途中で悲しくなってきたのでここらでやめさせていただこう。

要は、かかるものはかかるのである。

とはいえだ。
実はマッチャーの周辺の演劇人(主に小劇場出身者)は、チケット代の高騰に危機感を持っている者も少なくない。
リーズナブルな金額で舞台を提供していかなければ、ごく限られた層にしか演劇が届かなくなってしまうし、そもそも今や世間的に揺るぎない地位を確立した人気者の演劇人でも、かつてはアルバイトに明け暮れ日銭にも苦労した経験を持つ者も多いので、やっぱり受付で財布から一万円出さなきゃ観れない舞台が溢れている現状は、心苦しく思えてならないからだ。
なので、これからは少しでも低価格で舞台を提供しようと、作り手側が企画の立ち上げから積極的にイニシアティブを取って予算削減の創意工夫をしていくようなプロデュース公演も少しずつ増えてくるかもしれませぬ。
ま、あくまで希望的観測ではあるけども、とにかく少しでも多くの人達に気軽に舞台に触れてもらいたいと、我々なりに思っているのだ。

ただ思い起こせば、マッチャーが二十代前半の時などは、三千円程度で観られる芝居に面白いものも多かった気がする。
別に「今の若い衆、もっと頑張れ!」みたいな上から目線で言うわけではないけど、小さな劇場でやってた頃の大人計画なんかすでに刺激的だったし、グリマンデルと工事現場2号とかマシュマロウェーブとか、残念ながらマッチャーは未見だが劇団健康とか、小劇場ならではの突出した個性が現在の商業ベースの演劇に負けないぐらいの勢いを持っていたことは確かだ。

結局、アレですよ。
面白ければいろんな舞台があっていいのですよ。
一万円以上する商業舞台もあれば、五・六千円で本多劇場あたりで楽しめる舞台、はたまた三千円程度で楽しめる小劇場の舞台。
チケット代を抑えるアイディアは全く浮かばなかったけど、要はそれぞれのフィールドでそれぞれの演劇人が素敵な舞台を作っていけば、演劇業界はもっともっと活性化するし、劇場に足を運んでくれる観客の皆さんとも幸せな気分を共有出来るってことで、とりあえずこのテーマを閉じたいと思いやす。

これから先も舞台に関わる限り、上手くいく芝居もあれば力及ばず無念な思いに駆られる芝居だってあるだろう。
だが、演劇ばかりは商品(=作品)が出来上がる以前にチケット代をお客から徴収するという、言うなれば非常に不確定な興行だ。
だからなおのこと作り手としては、それがどんな作品であっても、表現者である自覚とプライドを胸に誠実な稽古を重ねて本番を迎えなければならないし、そんなのここで改めて書くほどのことでもないぐらいに至極当然の話なのであった。

では、マッチャー、世田谷の夜空に祈らせていただきます。
全ての演劇を愛する者達に、幸あれ。

じゃ、シーユー。

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